ETCカードのインボイスは利用証明書を全件保存?手間を減らせる4つの場合と協同組合の請求書の確認点

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法人クレジットカードのETCカードで高速道路を使っている会社では、「カードの利用明細だけではインボイス(適格請求書)にならない」と聞いて、毎月の通行1回ごとに利用証明書をダウンロードしているかもしれません。車が何台もあり、通行が月に何十件もあると、この作業だけで経理の時間がかなり取られます。

結論から言うと、利用証明書を全件保存するのは原則であって、国税庁は保存の手間を減らせる取扱いを示しています。会社の消費税の計算方法や規模、高速道路の使い方によっては、利用証明書を1件も取らずに済むこともあります。協同組合のETCカードなら、組合の請求書が保存の対象です。

この記事では、ETCカードの高速代でインボイスの保存を減らせる4つの場合と、協同組合のETCカードの請求書で確かめる3つの点、全件保存が必要な会社がETC利用照会サービスでまとめて取る手順を解説します。勘定科目や仕訳は、法人ETCカードの経費処理(勘定科目と仕訳例)で扱っています。

目次

原則:ETCクレジットカードは確定後の利用証明書を全件保存する

国税庁はインボイス制度のQ&A(問103)で、クレジットカード会社の利用明細書は「一般的に、適格請求書には該当しません」としています。明細を作っているのはカード会社で、高速道路を通らせた高速道路会社ではないためです。

そのため、ETCクレジットカード(クレジットカード会社が発行するETCカード。法人カードに付くETCカードも含む)で精算した通行料金は、原則として、高速道路会社が運営するETC利用照会サービスから、通行料金が確定したあとの利用証明書をダウンロードして保存します。料金所で受け取る利用証明書や、確定前(「※料金は確定ではありません」と表示されるもの)の利用証明書はインボイスの対象外です。

料金が確定するまでには時間がかかります。ETC利用照会サービスは、利用日ごとの確定の目安を次のように案内しています。

(2026年10月時点のETC利用照会サービス記載の内容)

利用した日料金が確定する目安
1日〜7日当月20日ごろ
8日〜15日当月27日ごろ
16日〜25日翌月7日ごろ
26日〜末日翌月12日ごろ

月末に利用した分は翌月12日ごろまで確定しないため、前月分をまとめて取るなら翌月の中旬以降に作業すると取りこぼしがありません。目安は「月の日数やシステムの稼働状況により前後する場合があります」と注記されています。

利用証明書の保存を減らせる4つの場合

原則どおり全件を保存しなくてよいのは、次の4つの場合です。1つ目と2つ目は会社の消費税の状況で決まり、どのカードでも同じです。3つ目と4つ目は国税庁がETCクレジットカード向けに示した取扱いで、ETCコーポレートカードとETCパーソナルカードは対象外です。

1. 免税事業者・簡易課税・2割特例の事業者は、仕入れのインボイスが要らない

インボイスの保存は、消費税の申告で「仕入税額控除」(売上の消費税から、支払った消費税を差し引く計算)を受けるための要件です。消費税を納めていない免税事業者は、そもそも仕入税額控除を行いません。

簡易課税制度を選んでいる事業者は、仕入れの消費税を売上の消費税から一定の割合(みなし仕入率)で計算します。2割特例も、納める税額を売上の消費税の2割とする計算です。どちらも実際に払った消費税を積み上げないため、高速代の利用証明書がなくても納税額は変わりません。

2割特例は期限のある経過措置です。国税庁は、個人事業者は「2割特例は、令和8年分の確定申告まで適用可能」で、令和9年分と令和10年分は3割特例が使えると案内しています。法人が使える期間は個人事業者と異なります。翌期以降に一般の計算(本則課税)へ移る見込みがあるなら、利用証明書を取れる状態にしておくと安心です。

2. 少額特例:1回の通行が税込1万円未満なら帳簿だけでよい

本則課税の会社でも、一定規模以下なら「少額特例」が使えます。国税庁のQ&A(問111)によると、対象は基準期間(法人は前々事業年度)の課税売上高が1億円以下、または特定期間(前事業年度の開始から6か月)の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。令和11年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます。

注意したいのは、1万円未満かどうかの判定の単位です。国税庁は「一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定」するとし、月まとめの請求書のように複数の取引をまとめた単位では判定しないとしています(問112)。ETCの高速代なら、カード会社の月の請求額ではなく、通行1回ごとの料金で判定すると考えられます。

近距離の通行が中心の会社なら、ほとんどの通行がこの特例に当てはまります。一方、長距離の走行や大型車では1回の通行が1万円を超えることがあり、その通行は特例の対象外です。帳簿には、通行した日・道路会社名・金額などを、利用明細をもとに記録しておきます。

3. 利用が多い会社は、カードの利用明細と道路会社ごとに任意の1件でよい

国税庁は問103で、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情で全件の保存が難しいときは、次の2つを併せて保存すれば仕入税額控除を行って差し支えないとしています。

  • クレジットカード会社の利用明細書(個々の高速道路の利用の内容が分かるもの。取引年月日・内容・金額が分かる利用明細データも含む)
  • 利用した高速道路会社や地方道路公社ごとに、任意の1取引の利用証明書

利用証明書は毎月取る必要はなく、高速道路会社が登録を取りやめないことを前提に「一回のみ取得・保存することで差し支えありません」とされています。NEXCO東日本・NEXCO中日本・首都高速など、使った会社ごとに1件ずつ保存すれば足ります。複数の会社の道路を通って別の会社の料金所で降り、降りた会社がまとめて利用証明書を出している場合は、その会社の利用証明書を保存します。

この方法では、カードの利用明細の側に1回ごとの通行が載っていることが前提です。合計額しか分からない明細では使えないため、カード会社の明細が通行ごとに出るか、明細データを保存できるかを確かめておきます。

4. 15か月以内に同じ道路会社を繰り返し使うなら、ダウンロードも要らない

問103の注記はさらに踏み込んでいます。電子で受け取るインボイスは、ダウンロードできる状態にあり、いつでも確認できるなら、必ずしもダウンロードしなくてよいとされています。そのうえで、ETC利用照会サービスでダウンロードできる期間(15か月間)に同じ高速道路会社の道路を繰り返し使っている場合は、利用証明書のダウンロードは不要で、クレジットカードの利用明細書の保存だけで仕入税額控除を受けられるとしています。

ただし、15か月を超えて間が空く道路会社の分は、利用証明書のダウンロードが必要です。年に1回しか通らない地方の有料道路などは、3つ目の方法で1件を保存しておきます。

この方法は、ETC利用照会サービスにいつでもログインできることが前提です。ETC利用照会サービスは、450日間ログインがないユーザーIDの登録を自動的に解約します(420日の時点でお知らせメールが届きます)。経理担当者が毎月ログインする手順にしておけば、解約の心配はありません。

自社が保存するものの早見表

4つの場合を、会社の状況とカードの種類で整理すると次のとおりです。上の行から順に当てはまるかを確かめます。

会社の状況ETCクレジットカード(法人カードのETCカード)協同組合のETCカードETCコーポレートカード
免税事業者・簡易課税・2割特例インボイスの保存は不要インボイスの保存は不要インボイスの保存は不要
本則課税で少額特例の対象1回1万円未満は帳簿のみ。1万円以上の通行は利用証明書組合の請求書NEXCOの請求書
本則課税で利用が多い利用明細+道路会社ごとに任意の1件の利用証明書組合の請求書NEXCOの請求書
同じ道路会社を15か月以内に繰り返し利用利用明細のみ(間が空く会社の分は1件保存)組合の請求書NEXCOの請求書
上のどれにも当たらない確定後の利用証明書を全件組合の請求書NEXCOの請求書

協同組合のETCカードとETCコーポレートカードは、組合やNEXCOから毎月の請求書が届くため、会社の状況によらず保存するものはほぼ同じです。インボイスの作業を一番減らしやすいのは、毎月の請求書をそのまま保存すればよい協同組合のETCカードといえます。

協同組合のETCカードは、組合の請求書で3つの点を確かめる

協同組合のETCカードは、組合が提携先の会社とともにETCカードを組合員に配り、通行料金をまとめて精算する仕組みです。国税庁はこの形について資料を作っており、組合がカードの利用明細と道路会社ごとの任意の1件の利用証明書を保存し、それをもとに組合員へ精算書を交付すれば、組合員はその精算書を保存して仕入税額控除を受けられるとしています。組合員の会社が利用証明書を取りに行く必要はありません。

3つの組合は、いずれも公式サイトで請求書のインボイス対応を案内しています。

  • ETC協同組合:「2023年10月よりインボイス対応の請求書を発行しております。」
  • 高速情報協同組合:「2023年10月利用分よりインボイス対応の請求書を発行しております。」
  • 関東通信事業協同組合(KTK)のETCカード:請求書のインボイス対応を案内

ただし、国税庁の資料では、組合の請求書には2つの形があります。組合が通行料金を立て替えて精算する形(立替経理)と、組合が道路会社から仕入れて組合員に売る形(両建経理)です。どちらの形かで書類の中身が変わるため、届いた請求書で次の3つを確かめます。

  1. 組合の登録番号(Tで始まる13桁の番号)が書かれているか。事務手数料は組合が売手となる取引なので、どちらの形でも組合の登録番号が必要です
  2. 事務手数料(走行料金の8%など)に税率と消費税額が書かれているか。国税庁の資料では、組合の手数料はインボイスとして税率と税額の記載が必要とされています
  3. 通行料金の欄が「精算書」の形なら、道路会社の名称と登録番号を確かめる方法があるか。立替経理の場合、国税庁は「組合と組合員の間で、道路会社の名称・登録番号を確認できるようにしておく必要」があるとしています

3つの組合がどちらの形で請求書を出しているかは、公式サイトに記載がありません。初めて届いた請求書で3つの点を確かめ、分からない点は組合に問い合わせておくと、決算や税務調査のときに慌てずに済みます。ETCマイレージや平日朝夕割引の還元を差し引いて書く様式も、国税庁の資料で認められています。

ETCコーポレートカード・ETCパーソナルカードは緩和の対象外

3つ目と4つ目の取扱いは、高速道路会社が発行するETCコーポレートカードとETCパーソナルカードには使えません。ETC利用照会サービスも、ETCコーポレートカードについては「インボイス要件を満たした利用証明書の発行はできません」と案内しています。

このため、ETCコーポレートカードはNEXCOから届く請求書、ETCパーソナルカードは月に1回届く「ご利用料金のお知らせ」を保存します。どの書類がインボイスになるかの一覧は、法人ETCカードの経費処理の記事にまとめています。

全件保存が必要なら、ETC利用照会サービスでまとめて取る

4つの場合のどれにも当たらない会社は、確定後の利用証明書を全件保存します。ETC利用照会サービスは無料で使え、複数枚のカードをまとめて管理できます。ユーザーIDの分け方や、CSVで車両別に集計する手順はETC利用照会サービスを法人で使うには?で解説しています。

(2026年10月時点のETC利用照会サービス記載の内容)

項目内容
登録に必要なものメールアドレス、ETCカード番号、そのカードで通行した日、その車の車載器管理番号(19桁)と車両番号の下4桁
登録の条件登録する日から過去15か月以内に、そのカードでETC無線通行をしていること
1つのユーザーIDに登録できるカード最大1,000枚(2025年11月18日から。それまでは10枚)
利用証明書の一括発行一度に1,000件まで
利用明細の出力PDFは一度に500件、CSVは5,000件まで
さかのぼれる期間利用する日の15か月前まで
登録の自動解約450日間ログインがないと解約

カードが100枚を超える場合は、検索条件の期間を2か月以内にするよう案内されています。毎月の作業は次の順番にすると、確定前の利用証明書を保存してしまう失敗を防げます。

  1. 翌月の中旬以降(26日〜末日の利用分が確定する翌月12日ごろより後)にログインする
  2. 前月分の利用明細の備考欄が、すべて「確認中」から「確定」に変わっているかを見る
  3. 利用証明書に「確」マークが付いていることを確かめて、まとめて発行・保存する

利用証明書はPDFなどの電子データで受け取るため、紙に印刷して保存するのではなく、電子帳簿保存法に沿ってデータのまま保存します。

インボイスの手間を減らすなら、請求書が届くカードを選ぶ

本則課税で少額特例も使えず、利用する道路会社がばらばらな会社では、ETCクレジットカードのままだと利用証明書の作業が残ります。毎月の請求書を保存するだけで済む協同組合のETCカードに切り替えると、インボイスの作業はほぼなくなります。

その代わり、協同組合のETCカードには出資金や走行料金の8%の事務手数料などの費用がかかります。4枚のカードの費用と条件を並べて比べたい方は、法人ETCカードおすすめ4選の費用比較をご覧ください。

インボイス対応の請求書とWEB請求書(楽楽明細)で月々の確認を済ませたいなら、ETC協同組合の申込ページから資料を取り寄せられます。

カード発行手数料と年間手数料を1枚550円に抑えたいなら、高速情報協同組合の公式サイトで条件を確かめられます。

ETCカードのインボイスでよくある質問

料金所でもらった利用証明書は使えますか?

使えません。NEXCOは、ETCクレジットカードで通行したときに料金所で発行する利用証明書と、ETC利用履歴発行プリンターの印字は、インボイスの要件を満たさないと案内しています。ETC利用照会サービスから確定後の利用証明書を取ります。料金所・SAのプリンター・ETC利用照会サービスの3つの証明書の違いはETC利用証明書は法人でどう取る?で解説しています。

利用証明書に会社名が書かれていなくても大丈夫ですか?

ETC利用照会サービスの利用証明書は、適格簡易請求書(簡易インボイス)として発行されます。簡易インボイスは、受け取る側の名称を書かなくてよい書類です。社員が個人のETCカードで立て替えた通行も、確定後の利用証明書と立替精算の記録を合わせて保存します。

通行料金のなかに、仕入税額控除できないものはありますか?

あります。国税庁は、空港と内陸部を結ぶ連絡橋の通行料金(空港連絡橋利用税)など、消費税の課税対象とならない金額は仕入税額控除の対象外としています。関西国際空港の連絡橋などを通る会社は、明細のその行を分けて処理します。

まとめ

  • ETCクレジットカードの高速代は、ETC利用照会サービスの確定後の利用証明書を全件保存するのが原則です。カード会社の利用明細だけではインボイスになりません
  • 免税事業者・簡易課税・2割特例の事業者は、仕入れのインボイスの保存が要りません
  • 一定規模以下の会社は、少額特例で1回の通行が税込1万円未満なら帳簿だけで済みます。判定は月の請求額ではなく1回ごとです
  • 利用が多い会社は、カードの利用明細と道路会社ごとに任意の1件の利用証明書でよく、15か月以内に同じ道路会社を繰り返し使うならダウンロードも不要です
  • 協同組合のETCカードは組合の請求書を保存し、組合の登録番号・事務手数料の税額・道路会社の登録番号の確かめ方の3つを確認します
  • ETCコーポレートカードとETCパーソナルカードは緩和の対象外で、NEXCOなどから届く請求書を保存します

本記事の内容は2026年10月時点で国税庁・ETC利用照会サービス・NEXCO・各協同組合の公式サイトに記載されている情報をもとにしています。税務上の扱いは会社の課税方式や規模によって変わるため、実際の処理は顧問税理士に確認し、手数料や条件は公式サイトで最新情報をご確認ください。

この記事を書いた人

法人ETCカードの費用構造と発行条件を、各発行元の公式サイトにあたって整理しています。年会費の表記だけでは見えない走行料金への手数料、出資金や保証金の扱い、必要書類の細かな違いなど、申し込み前に知っておきたい実務的な情報の提供を重視しています。掲載情報はすべて調査時点を明記し、条件変更を確認しだい記事を更新しています。

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